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2007年01月14日
 ■ Happy Birthday, Allen Toussaint!

 ニュー・オーリンズが生んだ最高のソング・ライターにして、唯一無二のソロ・アーティスト、暖かい音と独自のスタイルを持ったピアニスト、アレンジャーであり、献身的に働くプロデューサーでもあるアラン・トゥーサンは、1938年1月14日の生まれ。つまり、今日が69歳の誕生日なのだ。おめでとうございます、そして、元気でいてくれてありがとう、と心から言いたい。

 元気なばかりか、現役ミュージシャンとして第一線に復帰して(ハリケーン・カトリーナが原因なのは残念なことだが)、06年は来日ライヴという夢のような出来事まであったのだからうれしくなってしまう。20歳、32歳、34歳、37歳、40歳、58歳で、6枚のソロ名義のアルバムを発表してきたアラン・トゥーサンだが、ここ最近の活躍ぶりを見ると、どうしたって新作への期待が募る。今年はぜひ、新曲と歌声とピアノ演奏がたっぷり詰まったソロ・アルバムを聴かせてほしい。

 個人的な話をすれば、アラン・トゥーサンの音楽を初めて聴いてからすでに四半世紀も経つのに、本当に入れ込むようになったのは最近のことである。だから初来日も94年のフェスティバル出演も見逃している(悔しい)。ニュー・オーリンズには行ったことがないので、かの地の様子も想像するしかない(これも悔しい)。つまり「ニュー・オーリンズ音楽のファン」と言えるほどの知識も蓄積もないのだが、それでも「アラン・トゥーサンのファン」だと言えるのは、彼の音楽が明らかに他と違っていて、ソロ作でもプロデュース作でも聴けば大抵それとわかるからだし、さまざまな音源を集めて聴けば聴くほど、他のニュー・オーリンズ音楽にはない特徴がはっきりと浮かび上がってきて、代えの効かない個性にいよいよのめり込んでしまう。

 このブログを作った目的の一つに、アラン・トゥーサンについて連載するということがあり、近々始める予定なのだが、まずは誕生日のお祝いということで。


 アラン・トゥーサンのソロ名義のアルバム

The Wild Sound of New Orleans (1958) 20歳

ディスクユニオン 復刻LP

The Complete "Tousan" Sessions (1992) 20歳

Amazon.co.jp 同CD

Toussaint (1970) 32歳

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Life, Love and Faith (1972) 34歳

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芽瑠璃堂

Southern Nights (1975) 37歳

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HMV

Motion (1978) 40歳

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Connected (1996) 58歳

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2007年01月09日
 ■ エキストラ:スターに近づけ!

 昨夜WOWOWで放送された「エキストラ:スターに近づけ!」の第3話を見たら、あまりの面白さにテレビの前で転げ回ってしまった。ケイト・ウィンスレットいいなあ。

「エキストラ:スターに近づけ!」は英BBCで2005年に始まったテレビシリーズで、中年の売れないエキストラ俳優が、「セリフのある役」を求めて四苦八苦するというシットコム。毎回いろいろな撮影現場で有名スターと遭遇するしかけで、ゲストの豪華さが売りものになっている。
 ベン・スティラーがゲスト出演した第1回を見たときは、あまりにも“いたたまれない”自虐的なユーモアに恐れをなしてしまったのだが、「ケイト・ウィンスレットの回は面白いですよ」と教えてくれる人がいたので、もういちど見る気になったのだった。

 公式サイト(第1シーズン全6話)
 http://www.wowow.co.jp/drama/uk/ex/

 そもそも、いたたまれないシチュエーションが生み出す、身もだえしたくなるような意地悪な笑いは嫌いではない。いちばん好きなシットコムは「となりのサインフェルド」、二番は「あなたにムチュー」なので、世の善男善女の方々よりは耐性があるほうだと思っている。それでも、とくにイギリス流の底意地の悪さにはついて行けない時があって、やはりBBC制作でヒットした「The Office」も、そのせいで途中で脱落してしまったのだった。
 で、その「The Office」で一躍イギリスを代表する人気コメディアンになったリッキー・ジャーヴェイスとスティーヴン・マーチャントのコンビが、満を持して送り出した新作が、この「エキストラ:スターに近づけ!」、ということなのだと思う。主役のリッキー・ジャーヴェイスの芸風が苦手なのだから、この番組は端から鬼門――のはずだったのに、昨日の第3話を見て、録画してあった第2話もあわてて見て、すっかり脱帽してしまったのだった。

 うまいのは、スター本人のイメージを利用した人物設定の作り方。ベン・スティラーは増長した勘違い野郎で、むりに社会派を気取っている。ケイト・ウィンスレットはああ見えてじつは気さくな人柄で、気さくすぎてテレフォン・セックス指南までしてくれる――なんていうバカ展開を、本人も楽しそうに演じているのが可笑しすぎるのだ。
 ノミネート4回でいまだにオスカーがとれないという自虐ネタも全開で、そうじゃなきゃホロコースト映画の尼僧役なんかやらないワと言い放つビッチぶりも最高。映画のシーンになるとスコープ・サイズに切り替わる芸の細かさや、ロンドン近郊の撮影所の内部がちらちら見られるのもうれしくなる。

 第2話はロス・ケンプ篇で、これはさらに傑作だった。ロス・ケンプといっても日本での知名度はゼロに近いだろうが、テレビシリーズ「S.A.S. 英国特殊部隊」のサージェント・ヘンノ役でスターになった人。じつはこの「S.A.S. 英国特殊部隊」(の最初の2シーズン)は本当に好きだったので、ロス・ケンプにはそれなりに思い入れがあるのだが、役と自分を混同している成りきり男という設定がいかにもそれらしく、さらに後半でもうひとひねりしてあって笑って泣かせる話になっている。ちょっとだけ出てきて場をさらうヴィニー・ジョーンズも最高。

 そんなわけで、リッキー・ジャーヴェイスの芸風にも耐性がつき(人はこうして日々強くなっていく)、相棒のスティーヴン・マーチャント演じる無能なエージェントに爆笑し、さらにこのあとはサミュエル・L・ジャクソンやパトリック・スチュワートの回が控えているというのだから楽しみで仕方がない。
 そして気になって調べてしまったのだが、第2シーズン全6話のゲストは、オーランド・ブルーム、デイヴィッド・ボウイ、ダニエル・ラドクリフ(とダイアナ・リグとワーウィック・デイヴィスってどんな話なんだよ!)、コールドプレイのクリス・マーティン、イアン・マッケラン、ロバート・デ・ニーロだというからすごすぎる。これもWOWOWが放送してくれることを願いつつ、来週の放送が待ちきれない。


The Office allcinema IMDb

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となりのサインフェルド allcinema IMDb

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S.A.S. 英国特殊部隊 allcinema IMDb

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2007年01月04日
 ■ 2006年未公開DVDベストテン

 劇場未公開作のベストテンは毎年、映画秘宝の投票コメントにむりやり追記していたのですが、今年は書きそびれたのでこちらに載せておきます。
 SF・ホラー・ファンタジーのジャンル限定で。


1 セレニティー
Serenity  allcinema IMDb
 15話で打ち切られたテレビシリーズ Firefly の遺灰の中から不死鳥のごとく甦った劇場用SF大作。今きちんと製作費をかけてスペースオペラを作るとこうなる、という立派な見本といえる。「遠未来の宇宙に舞台を移した西部劇」というコンセプトに前向きな意味があるのもうれしい。物語はビターで大人向け、視覚効果もすばらしい仕上がり。ファンを味方に付けて、自分の作りたかったものに立派にけりをつけたジョス・ウェドンは偉い。

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2 ミラーマスク
MirrorMask  allcinema IMDb
 ニール・ゲイマンとデイヴ・マッキーンの本格的な映画進出作! というだけでも見逃せない奇々怪々な異世界往還ファンタジー。『サンドマン』などでおなじみ、マッキーンお得意の絵と写真をコラージュしたシュールレアリスティックなイメージが、そのままデジタルアニメでごちゃごちゃ動くのだからたまらない。話はサーカスの少女をヒロインにしたジュヴナイルなんだけど、ニール・ゲイマンなのでもちろん、大人が見ても胸に迫ります。

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3 ミート・オブ・ザ・デッド
Dead Meat  allcinema IMDb
 アイルランドの荒野から現れたとびきりのゾンビ映画。ゾンビ映画というのは低予算の自主製作でも作れるため、伝統的に、世界中で新人監督の登竜門になってきたわけだが、そのぶん独自のアイデアや世界観が厳しく問われるわけで、突出した傑作を作るのもなかなか難しい。これが初長篇という監督・脚本のコナー・マクマホンは、プロットをできるだけシンプルにすることで、さまざまな伝説を育んできた原野の風景を生かし、ロメロ的なゾンビ像に縛られない想像力を見せてくれた。

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4 世界の終り(マスターズ・オブ・ホラー)
Masters of Horror: Cigarette Burns  allcinema IMDb
『ゴースト・オブ・マーズ』以来4年ぶりとなるジョン・カーペンターの新作で、テレビシリーズ「マスターズ・オブ・ホラー」用に作られた60分の中篇。70年代にただ一度シチェス映画祭で上映されたきり忽然と消えた“呪われた映画”がある――という題材が題材なので、ホラー映画ファンに向けた小品かと思ったらとんでもない。『フリッカー、あるいは映画の魔』も真っ青の、手加減抜きの暗黒世界が待ち受けていましたよ。ノーマン・リーダス対ウド・キアーという配役もマル。

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5 エイリアンズ
Evil Aliens  allcinema IMDb
 原題も邦題もつまらなくて、まったく内容を表していないのが最大の欠点かな。『レザー・ブレイド』っていうおたくっぽいおねえちゃん吸血鬼アクション映画でデビューしたイギリスの新人監督ジェイク・ウェストが、7年ぶりにようやく完成させた第2作。ウェールズの孤島を舞台に、UFO番組の取材クルーと農夫3兄弟が、宇宙からの侵略者に決然と戦いを挑む。ストーンヘンジは空飛ぶ円盤の充電機だった! エイリアンはセックス殺人鬼だった! なんていうバカバカしいアイデアをちゃんと絵にして、徹底的にエロ・グロ・ナンセンスで押し切ったのがすばらし過ぎる。東京ファンタのオールナイトでかけたら拍手喝采だったろうなあ……。

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6 ベビー・ルーム(スパニッシュ・ホラー・プロジェクト)
Peliculas para no dormir: La habitacion del nino  allcinema IMDb
『ハイル・ミュタンテ! 電撃XX作戦』『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』のアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の、じつは初の本格ホラー。スペイン版「マスターズ・オブ・ホラー」というべきテレビシリーズの1作だが、87分あるので立派な新作長篇として通用する。“呪われた館もの”かと思ったらポランスキーばりの“妄想ひきこもりもの”に転じ、「シュレディンガーの猫を救おうとする者は、自らも箱の中に閉じこめられてしまう」なんていうSFぽい説明も出てくるし、赤外線キャメラという小道具の使い方も抜群だし、もう言うことなし。

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7 ガリシアの獣
Romasanta: The Werewolf Hunt  allcinema IMDb
 19世紀にスペインのガリシア州で起きた実話をもとにしたという人狼映画。15件の殺人容疑で逮捕された行商人マニュエル・ロマサンタの正体に、姉を殺されたヒロインが迫る。言ってみれば『ジェヴォーダンの獣』のリアル・ホラー版。ファンタスティック・ファクトリー・レーベルの第5作だが、堂々たる歴史文芸大作のおもむきで、製作者ブライアン・ユズナの色は限りなく薄い。狼から人間へと“人化”する変身シーンも見もの。ラムジー・キャンベル原作の『ダーク・チャイルド 血塗られた系譜』でデビューしたパコ(フランシスコ)・プラサ監督の第2作。

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8 ターミネーターV
Guardian of the Realm  official IMDb
 ロサンゼルスを舞台にした自主製作のアクション・ホラー。18世紀から悪魔と戦ってきたという秘密組織ガーディアンに所属する男女が、現代に甦った魔王と対決する。『ガイバー』や『DRIVE 破壊王』に出ていたベテラン・アクション俳優の監督デビュー作で、主演は「パワーレンジャー」シリーズのスタントマンだった人。というわけで日本の特撮テレビシリーズと同じ匂いがするのがミソ。低予算なのに、意外なほど美術や視覚効果に手をかけて、ていねいに作られているのも好感が持てる。特撮ヒーローものが好きなら一見の価値あり。

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9 ゾンビキング
Zombie King and the Legion of Doom (Enter...Zombie King)  allcinema IMDb
 メキシカンプロレス+ゾンビ+ガレージロックという三題噺的な、趣味性まるだしの怪作。しかもやけに寒々しいカナダ映画。ゾンビを使って世界征服を企む悪のプロレスラーに、正義のマスクマンたちが挑戦する。アクション指導と助演は元WWEのベテラン選手エル・フエゴ――というわりにはどの対決シーンも驚異的にしょぼい。「ジョージ・A・ロメロ提供」の冠付き。

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10 ゾンビの帰郷(マスターズ・オブ・ホラー)
Masters of Horror: Homecoming  allcinema IMDb
 これはまあ本当を言うと大したことないのだけど、あまりにもストレートな政治的メッセージに敬意を表して。ジョー・ダンテの新作。

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 と、ここまでは新作のベストテン。日本初登場の旧作も別に紹介しておこう。

発掘作ベスト3


1 デイ・オブ・ザ・トリフィド
The Day of the Triffids  allcinema IMDb
『人類SOS!』なんか目じゃない、と名のみ高かったBBCによる81年のテレビミニシリーズ版がまさかの邦盤化。見られただけでもうれしいのに、イギリスSFらしい暗く恐ろしい終末SFで大満足。原作に忠実なトリフィドの造形もマル。

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2 Dr.ジキルvs.狼男
Dr. Jekyll y el Hombre Lobo  allcinema IMDb
 スペインの怪奇スター、ポール・ナッシーの72年の未公開作。スペインの古城からスウィンギン・ロンドンへといきなり舞台が移る意外性、ジキル博士の孫が祖父の残した薬を使って狼男を治療するという物語のサービス精神がうれしい、知られざる佳作。
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3 フレッシュイーターズ 人喰いモンスターの島
The Flesh Eaters  allcinema IMDb
 低予算の凡作として扱われることが多かった64年の未公開作だが、字幕付きの新マスターで見てみれば、撮影と編集に緊張感があって意外な拾いもの。銀色に発光する泡状の生命体が、巨大化するクライマックスも楽しい。
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