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2007年03月31日
 ■ 23年ぶりにペーター・ブロッツマンを見る

 新宿ピットインで、ポール・ニルセン=ラヴ、ペーター・ブロッツマン、八木美知依のコンサートを見た。「びっくりゲストあり」と告知されていた4人目の演奏者が誰なのかという疑問は、開演前にブロッツマンと坂田明が談笑しながら歩いていたのであっけなく氷解。ブロッツマンの生演奏は5~6回、あるいはもっと見ていると思うので、いきなり姿を見ても感慨はなかったが、よく考えてみれば、レコードでもCDでもビデオでもなく演奏をじかに聴くのは、じつに23年ぶりのこと。こちらが20歳ぐらいの時からずっと第一線で活躍し続け、姿かたちにもあまり変化がないブロッツマンや坂田明は、やはり傑物なのだ。

 企画・MCのマーク・ラパポートさんの前口上のあと、第一部はトリオで4曲を演奏。ブロッツマンはクラリネット、ソプラノ~テナー・サックスと持ち替え。八木は20絃箏と17絃箏のうち音の低いほう(たぶん17絃箏)を主に演奏していたと思う。ニルセン=ラヴのドラムは相変わらずソリッドで手数の多いもので、前のめりにハードにドライヴしながら、全体としては優雅にスウィングしているという、この人の特殊能力が最初から全開。小一時間のセットを集中して聴いて、もうこれ以上ないというぐらい堪能したのだが、坂田の加わった第2部はさらに輪をかけて凄かった。

 まず、坂田とブロッツマンが並んで演奏している図が珍しくて嬉しくて、その上、2曲目の出だしで坂田がクラリネットに持ち替えると、ブロッツマンが取り出したのは何とアルト・サックス。目を閉じて聴いたら演奏者を間違えるかもと一瞬思ったが、出てくる音は紛うかたなきそれぞれのもので、個性は聞き違えようがない。途中で坂田がアルト・サックスに戻り、なんと日独巨匠のアルト合戦が実現。ブロッツマンのアルト演奏を聴くのは初めてだと思うが、低い音域を重く吹き鳴らすので、まったくアルトらしくないのが面白い。第1部よりも音量を上げて徹底抗戦する八木。細い体をしならせて一心不乱に爆音をまき散らすニルセン=ラヴ。いやもう、気がついたらずっと噛みしめていた奥歯が痛かったというぐらい、集団即興を聴く緊張感と楽しみに満ちた、期待を遙かに上回るステージでした。

 ひとつ疑問に思ったのは各曲のエンディングで、何の合図も目配せもないのに、一丸となってドンッと終わることができるのは、どうやっているのだろう? レギュラー・グループではないだけに、息がぴったり合っているのが不思議だった。

 ニルセン=ラヴは2005年4月の来日の時も、八木とのセッションとアトミックでの演奏を見たが、ジャズのコスプレみたいなアトミックよりも、こういうセッティングのほうが遙かに面白い。ラパポートさんによると、10月ごろザ・シングとして来日するかもとのこと。今から楽しみである。


このトリオが結成された昨年夏のノルウェーでの演奏がYouTubeにありました。
http://www.youtube.com/watch?v=rbxUGandqkc

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2007年03月20日
 ■ スペースオペラを舐めてはいけない

 3月2日に出たDVDです。なかなか面白かったのでおすすめしておきます。
「ピースキーパー・ウォー 最終大戦」

Amazon.co.jp
DMM

 原題を "Peacekeeper War" といって、3時間を超えるテレビムービーの大作です。2004年の作品で、じつはテレビシリーズ「ファースケープ 宇宙からの帰還」のスピンオフ完結篇なのです。
「ファースケープ 宇宙からの帰還」というのは、1999年に始まったSFテレビシリーズで、2003年までに4シーズン全88話が作られました。日本では紹介のされかたがちぐはぐだったので、結局、最初の2シーズン分しか放送もソフト化もされず、人気もいまひとつ盛り上がらなかったように思います。

 6年前に私がSFマガジンに書いた短評はこれ。

ファースケープ 宇宙からの帰還
Farscape
99年英・米■企画・脚本ロックニ・S・オバノン■製作総指揮ブライアン・ヘンソン、他■出演ベン・ブロウダー、クローディア・ブラック■テレビシリーズ■徳間ジャパンより11/23発売開始(全11巻)
NASAの技術者が試験飛行中にワームホールに呑み込まれ、未知の宇宙へ。圧政者のもとを逃れた囚人船に乗り組み、さまざまな異星人と共闘しながら、故郷への道を探る。エキゾチックなスペースオペラの人気シリーズから第1シーズン22話をビデオ化。飄々とした味わいは英共同制作ゆえか。

 英米合作と書いていますがこれは間違い。正しくはアメリカ・オーストラリア合作です。謝して訂正しておきます。「エイリアン・ネイション」「シークエスト」のプロデューサー、ロックニ・S・オバノンが企画した第三のシリーズで、製作はジム・ヘンソン・プロ。撮影はオーストラリアで行われました。

 私は最初の数話を見たきりだったのですが、今回、完結篇を見て、こんなに面白いなら、もっとちゃんと見ておけばよかったと反省しました。
 打ち切りが決まったあと、物語をちゃんと終わらせるべく、プロデューサーが執念で完成させた完結篇――という成立事情は『セレニティー』(についてはこちら)に似ています。硬派な宇宙SFとはちょっと違う、今どきのスペースオペラをめざした姿勢も共通しています。

 宇宙SFのテレビシリーズというと、どうしても「スター・トレック」の歴代シリーズや「バビロン5」、今なら「バトルスター ギャラクティカ」のような、それ相応の科学性と、現代社会とリンクするテーマを持った、硬派な作品に目が行きがちです。実際、これらのシリーズが各時代を代表する名作なのは間違いのないところなんですが、主流があれば傍流もあるわけで、「ピースキーパー・ウォー 最終大戦」は、傍流の魅力と楽しさをいいかたちで実現した作品なのです。

 この完結篇では、主人公のアメリカ人宇宙飛行士ジョンは、出会った当初は喧嘩してばかりだった女戦士エアリンと、どこでどうなったのか相思相愛の仲になっていて、エアリンはすでに妊娠しています。しかし、結婚式を挙げようとするたびに宇宙規模の横槍が入り、2人は否応なく、宇宙を二分する二大勢力の最終決戦に巻き込まれて、恒久平和のためにジョンはついにピースキーパーとしての役割を果たすことになります。

 魅力的なキャラクター、エキゾチックな設定、やたらとスケールの大きな物語という、スペースオペラの三種の神器を揃えた上に、口八丁手八丁のヒーロー、気っぷのいいヒロイン、活きのいい会話とくれば、面白くならないわけがありません。結婚式の繰り返しギャグは『スター・トレック ネメシス』にもありましたが、ここではそれがメインプロットなので、世にも珍しい「結婚SF」と呼びたくなります。

 クライマックスではあっと驚く有名SF映画の引用もあって、椅子から落ちそうになりましたが、これは見てのお楽しみということで。

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2007年03月16日
 ■ 最近の仕事 映画秘宝

『ドリームガールズ』は大傑作だと思っている私が来ましたよ! 冷静になるために劇場で日をおいて2度見たのですが、確信は深まるばかりでした。雑誌「映画秘宝」の次号(3月21日発売)に思うところを書きましたので、ぜひ読んでください。

 映画秘宝では、映画の挿入歌をテーマにしたコラムを連載しています。1990年ごろ「宝島」のビデオ評でライター・デビューした私にとって、「映画秘宝」で原稿を書くのは自然なことでしたが、それにしても長くやらせてもらっていて、読者と編集部には感謝しています。

 今はじつは、その次の号に載る、私が世界で一番好きな監督についての原稿を書いているところです。このために、まるまる1週間スケジュールを空けて、他の仕事を入れずにおいたので、集中して取り組めるのがうれしいです。
 気持ちを盛り上げるために、壁のポスターも貼り替えてみました。



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 ■ 3月の録画予定(補遺)

 なんで抜けていたのかわかりませんが、大事な作品を忘れていました。
『ロイヤル・スキャンダル』(WOWOW 3月17日)

 エルンスト・ルビッチの最後から3番目の映画。これまた日本初登場です! ルビッチは撮影中に心臓発作で倒れ、オットー・プレミンジャーが完成させたという曰くつきの1本。どのぐらいルビッチ・タッチが残っているのかわかりませんが、とにかく見る機会のない映画なので楽しみです。



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2007年03月02日
 ■ 3月の録画予定

 毎月自分用に作っている録画リストから、同好の士に広くおすすめしたいものを抜き出してみました。

 まず、3月にテレビ放送される映画で、もっとも推したいのがこれ。
『ロック・ハンターはそれを我慢できるか?』(WOWOW 3月10日)

 変な邦題と言うなかれ。あの大傑作『女はそれを我慢できない』と対になる、フランク・タシュリンとジェーン・マンスフィールドのコンビの幻の傑作。ついに日本初公開です! 内容からいくと『男もそれを我慢できない』なんていう邦題でも良かったと思うのですが、原題 "Will Success Spoil Rock Hunter?" の感じを残したといったところでしょう。
(傑作の評価を疑うならIMDbの点数をご覧あれ)
http://us.imdb.com/title/tt0051196/

 WOWOWの旧作枠ではこれも見逃せません。
『魚が出てきた日』(3月3日)

 理由はわかりませんが、メジャー配給の話題作だったにもかかわらず、とにかくソフト化されない、知る限りここ20年ぐらいはテレビ放送もないという幻のSF映画です。今となっては大した内容ではないかもしれませんが、じつは見たことがないので、非常にうれしいです。

 邦画の旧作枠も、未見の映画ばかりで個人的にはうれしいラインナップ。松方弘樹特集だそうで、毎週日曜にこの4本が放送されます(WOWOW 3月4日~)。
『刑務所(ムショ)破り』
『秘剣破り』
『玄海遊侠伝 破れかぶれ』
『兇状流れドス』
 すべて大映京都作品。1969~70年という微妙な時期の映画なので決して傑作ではないでしょうが、順に、池広、池広、マキノ、三隅という顔ぶれでは、素通りできるわけがありません。すべて未DVD化。CSなどでもあまり放送された記憶のないものばかりです。ちなみに『秘剣破り』は『薄桜記』の、『玄海遊侠伝~』は『日本大侠客』のリメイクとのこと。

 次いでおすすめは、チャンネルNECOがついにやってくれました! 『大番』シリーズ4作の一挙放送です(3月8日~)
『大番』
『続大番 風雲篇』
『続々大番 怒濤篇』
『大番 完結篇』
 加東大介演じる株屋のギューちゃんの一代記。10数年ぶりに見るのですが、とにかく無類におもしろく、それでいて黄金時代の邦画らしい風格もあって、見惚れてしまった記憶があります。私はこれで千葉泰樹という監督にはまりました。「成瀬巳喜男になれなかった男」の、ひょっとしたら最高傑作かもしれないシリーズを、ぜひ大勢の人に見てほしいです。

チャンネルNECOの特集ページ
http://www.necoweb.com/neco/program/category.php?id=413

 千葉泰樹は今月はもう1本あって、三船敏郎主演の1957年作品とのこと。これも楽しみです。
『下町(ダウンタウン)』(チャンネルNECO 3月4日~)

 めずらしいところでは、三隅研次の初期作も。
『三日月秘文』(チャンネルNECO 3月5日~)

『港まつりに来た男』(東映チャンネル 3月6日~)
 マキノ雅弘の1961年作品で、意外と見る機会のない映画です。今月は東映チャンネルは止めようと思っていたのに、これ1本が決め手で継続と相成りました。

 日本映画専門チャンネルでは、2ヶ月目に入った「悪名」シリーズ一挙放送のほか、快楽亭ブラックの監修による落語映画の特集が! これがとにかく凄いラインナップで、マキノが監督した藤山寛美の『色ごと師春団治』のほかは、曲谷守平の『金語楼の三等兵』だの、これまた千葉泰樹の『羽織の大将』だの、見たことも聞いたこともないような作品が目白押し。やればできるじゃん!と背中を叩きたくなります(誰の?)。

日本映画専門チャンネルの特集ページ
http://www.nihon-eiga.com/rakugo/hoso/index.html

 また、これはDVD化されていますが、シネフィル・イマジカで、『歓喜に向って』『夏の遊び』そして『不良少女モニカ』と、初期のイングマール・ベルイマンのいちばんおいしいところが放送されるのも見逃せません。ベルイマンは最初の10年が大好き、というダメなファンなので。

 そのほか、映画ではありませんが、ディスカバリーチャンネルで、アジアのホラー映画についてのドキュメンタリーが放送されるそうで、これも気になります。
http://japan.discovery.com/series/index.php?sid=746
 
 

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