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2008年06月30日
 ■ あなたはまだ本当のドン・シーゲルを知らない

   

 すでにご存じの方も多いと思いますが、7月7日~11日にWOWOWでドン・シーゲル監督の特集が放送されます。
 放送されるのは以下の4作品(おすすめ順)。

殺人捜査線
The Lineup (1958)  WOWOW IMDb

第十一号監房の暴動
Riot in Cell Block 11 (1954)  WOWOW IMDb

グランド・キャニオンの対決
Edge of Eternity (1959)  WOWOW IMDb

中国決死行
China Venture (1953)  WOWOW IMDb

 すべて50年代映画! すべて未DVD化! すべて名のみ知られた幻の作品! というマニア垂涎、映画ファン陶然のラインナップです。『第十一号監房の暴動』だけは、かつてアメリカ版VHSで見ることができましたが、それ以外はすべて、世界のどこでもいちどもソフト化されたことがありません。
『殺人捜査線』と『中国決死行』は、今回の放送が日本初公開。『第十一号監房の暴動』と『グランド・キャニオンの対決』は、劇場公開されていますが、テレビ放送はほとんどなかったはずです(少なくともこの30年ぐらいは)。

 しかも、全作品、今回の放送のために制作された、オリジナル・サイズのHDマスターを使っての放送になるそうです。
(訂正:『第十一号監房の暴動』のみHDマスターではないとのこと。オリジナル・サイズなのは変わりません。7月7日追記)

 ドン・シーゲルのフィルモグラフィを参照してもらえば判るように、要するにこれは、30~40代の働き盛りだったドン・シーゲル監督が、メジャーからBムービー専門スタジオまで、ハリウッドの大小の製作会社を渡り歩き、悪条件と戦いながら、自分のスタイルに磨きをかけていった時期の重要作ばかり。日本におけるドン・シーゲルの評価を、決定的に塗り替える特集になるに違いありません。

(この項まだ続きます)
  

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2008年06月25日
 ■ SFマガジン8月号

 6月25日発売の雑誌「SFマガジン」8月号では、連載ページで新作DVDの紹介と、製作ニュース、DVD&テレビ注目作のコラムを書きました。

SFマガジン2008年8月号

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 今月、短評を書いたDVDはこの8本。

ペルソナ allcinema amazon.co.jp
巨匠とマルガリータ allcinema amazon.co.jp
デス・ロード 染血 allcinema IMDb
パンプキンヘッド 復讐の謝肉祭 allcinema IMDb
サイボーグ・ソルジャーズ IMDb
ガーゴイル・トゥルーパーズ allcinema IMDb
ディストラクション 合衆国滅亡 IMDb
トレマーズ・ライジング allcinema IMDb

 どれが隠れた傑作で、どれが意外な拾いものか、ぜひ誌面で確認してみて下さい。

 ちなみに今月号の特集は「スプロール・フィクション特集IV(監修:小川隆)」。ベンジャミン・ローゼンバウムなど6篇の翻訳短篇が読めます。

 また、『スターシップ・トゥルーパーズ3』の公開に合わせて、エド・ニューマイヤー(監督・脚本)のインタビューが載っているのにはびっくり! 
 このエド・ニューマイヤー(脚本家)と、フィル・ティペット(特殊効果)、ジョン・デイヴィソン(プロデューサー)の3人が、SFを絆に一致団結し、ポール・ヴァーホーヴェンを支えて『ロボコップ』『ロボコップ2』『スターシップ・トゥルーパーズ』を作ってきた経緯が私は大好きなのですが、この名トリオも前作『スターシップ・トゥルーパーズ2』を最後に解散。新作ではエド・ニューマイヤーだけが残って頑張っています。

 そういえば、まだ入手していませんが、今月は「ミステリ・マガジン」の特集も「幻想と怪奇(監修:中村融)」なので、読むのが楽しみです。

ミステリ・マガジン2008年8月号

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 ■ Ken Vandermark のドキュメンタリー映画

「添野君、ヴァンダーなんとかっていうサックスの人、知ってる?」と、ある人から訊かれたのは一昨年のこと。「知ってるもなにも、ケン・ヴァンダーマークだったら96枚ぐらいレコード持ってますよ!」と威勢よく答えたわけだが、なんでもドキュメンタリー映画祭のコンペ部門に、ヴァンダーマークを撮った映画の応募があったのだという。
 そんなわけで、そういう作品があることは早くから知っていて、見たくてたまらなかったのだが、昨年いくつかの映画祭で上映され、先月ついに米本国でDVD化されたこれを、ようやく見ることができた。

"The Work Series: Musician" (Facets Video DV96157/2008)

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 ケン・ヴァンダーマークをかんたんに紹介すると、フリー・ジャズの演奏家で、シカゴ在住の白人男性で、テナー・サックス、バリトン・サックス、クラリネット、バス・クラリネットを主に演奏し、数えきれないほどのグループや企画を主宰し、(フリー・ジャズや即興音楽の世界では)国際的な人気があるが、いまだ来日したことがない、という人である。私も生演奏に接したことはない。

 個人的には、90年代の一時期まったくジャズを聴かなくなっていた私を、レコードを通じて引き戻してくれた恩人のひとりであり、それ以来のファンなのだが、この人のすごいところは、とにかく多作なことで、聴き続けているとあっという間にCD棚が埋まってしまう。毎月のように新作・参加作のアルバムが出ていて、中には2枚組、3枚組、ひどいときは12枚組(!)もあるという情け容赦のなさ。それでも、どのアルバムもそれぞれ工夫が凝らされ、ていねいに作られていて聴きでがあるから、やめられない止まらないのである。

 このドキュメンタリー映画『ミュージシャン』は、06年ごろのヴァンダーマークに密着取材した作品で、ダニエル・クラウスというドキュメンタリー映画作家の「仕事」シリーズ第2弾として製作された。「保安官」「音楽家」と来て、次作は「大学教授」というシリーズなのだが、別に職業紹介が目的ではなく、どれも特異な人物ありきでその仕事に迫るという内容になっているようだ。

 本篇58分、ヴィスタ・サイズ、HDヴィデオ撮影で、DVDはスクイーズ収録。NTSCのみだが、リージョン・オールの英語字幕付きということで、世界中で見てもらうことを想定した仕様になっている。聴き取りの苦手な日本人としては、英語字幕は最高にありがたい。
 特典として、本篇で使われなかったシーンがこれまた60分近く付いており、ノーカットの演奏シーンも含まれる。音楽ファンにとっては、ほとんど2時間近いてんこ盛りの内容と言える。

 全体は「作曲」「スタジオ」「ツアー」「家族」など11章に分かれており、スクールデイズ、ポール・ニルセン=ラヴとのデュオ、FME、パワーハウス・サウンド、CINC、ソロなどさまざまな編成での演奏シーンが次々に飛び出してくる。CINCでの北米ツアーが一応の山場になっているが、映画全体としては、音楽にもインタビューにも偏ることなく、人物をじっと見つめて、そこから何かを感じ取らせるという手法が貫かれている。最前からこれを「音楽ビデオ」ではなく「ドキュメンタリー映画」に分類しているのは、この手応えがはっきりしているからに他ならない。

 レコードから聞えるもの、そこから私の中にできあがっていたケン・ヴァンダーマークという人の人物像を超えるものは、ここにはない。しかし意外性がないからといって、この映画が薄っぺらな出来というわけではまったくない。それどころか、100枚のアルバムを聴いてきたのと同じ印象を1時間で得られるのだから、優れたドキュメンタリー映画の力というのは、やはり大したものなのだ。

 ここに映っているのは、つねに疲れきって、睡眠不足で、いらだっている一人の男の姿である。40代になったばかりの彼は、いらだちを静かに押し殺しながら、作曲して、練習して、リハーサルをして、録音して、スケジュールを立てて、ツアーに出て、インタビューに答えている。DIYに徹した活動ぶりと、そうでなければやっていけない「フリー・ジャズ」演奏家の生活の厳しさに驚く人もいるかもしれないが、それはこのジャンルの聴き手なら先刻承知のこと。問題はなぜそこまでして、多岐にわたる活動を続けるのか、倦まず弛まずライヴとレコード制作に邁進するのか、であり、1時間の映画を最後まで見ることで、その答えが「音楽家」と「音楽」の関係にあることがわかってくる仕掛けになっている。

 そこで初めて『ミュージシャン』という題名の意味と普遍性が浮かび上がってくるのだが、だからといって撮影の対象が誰でもよかったというわけではなく、これはやはり、ケン・ヴァンダーマークという特異な音楽家がいてこそ成立した映画なのだ――というのは贔屓の引き倒しだろうか。

 そのほか、わかっていたはずでも、改めて印象づけられたのは、作曲を重視するヴァンダーマークの姿勢。即興で演奏することと同じぐらい、作編曲へのこだわりがあり、この2つが2本の柱のように彼の音楽活動を支えている。そんな印象が得られたのは収穫だった。

 未使用シーンの中には、本篇には登場しない、テリトリー・バンドのリハーサル風景や、ヴァンダーマーク5、ブリッジ61といった編成での演奏が含まれている。音楽ファンとしてはもちろんうれしい付録なのだが、これらの撮り方や、撮っておいて使わなかった選択基準をみても、映画の作り手の目的意識の高さ、明解さがよくわかる。ダニエル・クラウスというこの監督の今後も、要注目だろう。


Ken Vandermark 本人のサイト
http://www.kenvandermark.com

Ken Vandermark のディスコグラフィ
http://tisue.net/vandermark/

Daniel Kraus と Work Series のサイト
http://www.workseries.com
 

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2008年06月23日
 ■ 映画秘宝8月号

 6月21日に出た雑誌「映画秘宝」8月号では、連載コラムで新作映画『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』について書いています。とりあげた曲はキンクスの「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ」。『ホット・ファズ』が気になる映画ファンも、キンクスのファンも、ぜひ読んでみて下さい。

映画秘宝2008年8月号

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 キンクスはもちろん好きなのですが、自分でも意外なことに、連載82曲目にして初登場です。キンクスの場合、映画で使われるのは「ユー・リアリー・ガット・ミー」ばかりだし(あくまで印象ですが)、たまに内容にからめて使われていても映画がピンと来なかったりで(『ダージリン急行』とか)、これまで取り上げる機会がありませんでした。
 まさかこれほど、じかに影響を受けた映画が作られるとは思ってもみなかったので、だいじに残しておいて良かったです。

キンクス『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』
The Kinks "The Kinks Are the Village Green Preservation Society"

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HMV

 というわけで、ほんもののヴィレッジ・グリーン(共有緑地)が見られる映画『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』は、7月5日より全国順次公開です。

公式サイト
http://hotfuzz.gyao.jp/


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2008年06月20日
 ■ アメリカ映画ベストテン(SF篇)

 AFI(アメリカ映画協会)恒例のベスト・アメリカ映画ランキング。おととい発表された今回のベスト企画は、アニメーションから史劇まで、10ジャンルのベストテンで合計100本という新趣向になっています。

http://www.afi.com/10top10/

 正直言って、なんだか首をひねるような映画が入っているベストテンが多いのですが、そんな中では、SFはいちばんましな結果になっているような気がしました。

AFIの選ぶアメリカ映画ベストテン(SF篇)
http://www.afi.com/10top10/scifi.html

(1) 2001年宇宙の旅
(2) スター・ウォーズ
(3) E.T.
(4) 時計じかけのオレンジ
(5) 地球の静止する日
(6) ブレードランナー
(7) エイリアン
(8) ターミネーター2
(9) ボディ・スナッチャー 恐怖の街
(10) バック・トゥ・ザ・フューチャー

 さて、個人的な好き嫌いを別にして、SF映画史にもっとも貢献したアメリカ映画を10本選ぶとしたら、私ならどうするか。50年代の映画をもう1本入れて(『放射能X』『原子怪獣現わる』『禁断の惑星』のどれか)、90年代以降の代表として『マトリックス』も入れて、『時計じかけのオレンジ』と『エイリアン』を外して、『遊星からの物体X』も入れたいので『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にも泣いてもらって、あと『ターミネーター2』より『ターミネーター』のほうが重要ではないかと。

 これだけ厳選しちゃうと順位を付けるのは非常に難しいんですが、無理に並べるとしたらこんな感じでしょうか。

私の選ぶアメリカ映画ベストテン(SF篇)

(1) 2001年宇宙の旅
(2) 地球の静止する日
(3) スター・ウォーズ
(4) 放射能X
(5) ブレードランナー
(6) ターミネーター
(7) ボディ・スナッチャー 恐怖の街
(8) マトリックス
(9) 遊星からの物体X
(10) E.T.
 
 こうして見ると、好き嫌いを別にして、と言いつつ、選者のSF映画史観が出てしまうのが、おもしろいところではないかと思います。 
 

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2008年06月18日
 ■ ギャラクティカ通信

 今日発売の雑誌「テレビブロス」6/21号で、SFテレビシリーズ「ギャラクティカ」の宣伝記事を2ページ書きました。題して「ギャラクティカ通信」。「バトルスター・ギャラクティカ」のファン、SFテレビドラマのファンにぜひ読んでいただきたい、ひじょーにふざけた内容になっています。「螢雪ジェダイ」が好きだった人にもおすすめです。

テレビブロス6/21号

公式サイト


「バトルスター・ギャラクティカ」(DVD題「ギャラクティカ」)については、スーパー!ドラマTVでシーズン1の放送が始まったときに、公式サイトで5回にわたってコラムを書かせてもらいました。とにかく作品がすごいので、応援するほうもつい力が入ってしまい、まじめな内容については、ここで書き尽くしてしまった感があります。

書き下ろしコラム(第1~5回/第1回は池田敏執筆)
http://www.superdramatv.com/line/galactica/features/column_01.html

書き下ろしコラム(第6回)
http://www.superdramatv.com/line/galactica/features/column.html


 そんなわけで、今回のテレビブロスの話は、まじめな内容だったら正直言ってネタ切れです、と言おうと思っていたのですが、なんと編集者の方も「ふまじめ大いに結構!」と乗ってくれたので、喜び勇んで書かせてもらいました。パロディ新聞なんてまるで中学高校生のころに還ったようですが、じつはこういうの大好きなんですよね。

 SFオンラインの「螢雪ジェダイ」連載では、担当編集者として渡辺麻紀さんの手伝いをしました。今回はあの楽しさに少しでも近づければ、と頑張ってみましたが如何でしょうか。
 

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2008年06月07日
 ■ "Southern Nights" のリマスター盤が出た

 雑誌レコード・コレクターズの6月号でアラン・トゥーサン特集・後篇の原稿を書きました。

レコード・コレクターズ 2008年6月号

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 ソロ名義の活動、メンバーとして参加したグループ/プロジェクトを紹介した前篇(3月号)に続き、今回はプロデューサーとしての活躍を紹介しています。80年代からニュー・オーリンズR&Bの音源リイシューに関わってこられた湯浅学氏によるアルバム・レビューが5ページ、私が評伝とリストという構成になっています。

「アラン・トゥーサンのプロデュース全仕事」という恐れ知らずのコピーが付いていますが、まさにその意気でシングルとアルバムのリストをまとめたものの、これですべてと言い切れるとは思っていません。追加や訂正の情報をお持ちの方は、ぜひ編集部のほうまでご連絡いただきたいと思います。

 とにかく、これで大役を果たせたという安堵感から、書き終えてしばらくは気が抜けたようになっていたのですが、2回目ということで今度こそ悔いの残らないように書きましたので、アラン・トゥーサンやニュー・オーリンズの音楽に興味のある方はぜひ読んでみてください。

 ちなみに第一特集はスティーヴ・ウィンウッドの大特集なのですが、2つの特集を続けて読むと、ウィンウッドとトゥーサンが意外なほど近くで活動してきたことがわかっておもしろいです。

 そういえば、タイミングよくアラン・トゥーサンのソロ・アルバム『サザン・ナイツ』の国内盤CDが、新たにリリースされています(5月28日発売)。

Allen Toussaint "Southern Nights"
(Warner Music Japan/WPCR-75407) 2008

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HMV

 何といっても注目は「デジタルリマスター」と明記されていること。91年の初CD化以来17年ぶりの新マスター採用ということになるのかもしれません。レーベル面がリプリーズ盤を模したものに変わったのも嬉しいところ。ブックレットも版面が一新されて読みやすくなり、内容も新解説(松永良平)、91年版解説(ピーター・バラカン)、歌詞対訳という構成に変わっています。これで1800円は安いのではないでしょうか。
 前作 "Life, Love and Faith" と並ぶ代表作ですので、試しに1枚聴いてみようかという方にもお勧めしたいです。

左:75年の米オリジナル盤のレーベル / 右:今回のCDのレーベル
 

おまけ:75年の日本盤『サザン・ナイト』

 

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