≪ スペースオペラを舐めてはいけない | メイン | 4月の録画予定 ≫
2007年03月31日
新宿ピットインで、ポール・ニルセン=ラヴ、ペーター・ブロッツマン、八木美知依のコンサートを見た。「びっくりゲストあり」と告知されていた4人目の演奏者が誰なのかという疑問は、開演前にブロッツマンと坂田明が談笑しながら歩いていたのであっけなく氷解。ブロッツマンの生演奏は5~6回、あるいはもっと見ていると思うので、いきなり姿を見ても感慨はなかったが、よく考えてみれば、レコードでもCDでもビデオでもなく演奏をじかに聴くのは、じつに23年ぶりのこと。こちらが20歳ぐらいの時からずっと第一線で活躍し続け、姿かたちにもあまり変化がないブロッツマンや坂田明は、やはり傑物なのだ。
企画・MCのマーク・ラパポートさんの前口上のあと、第一部はトリオで4曲を演奏。ブロッツマンはクラリネット、ソプラノ~テナー・サックスと持ち替え。八木は20絃箏と17絃箏のうち音の低いほう(たぶん17絃箏)を主に演奏していたと思う。ニルセン=ラヴのドラムは相変わらずソリッドで手数の多いもので、前のめりにハードにドライヴしながら、全体としては優雅にスウィングしているという、この人の特殊能力が最初から全開。小一時間のセットを集中して聴いて、もうこれ以上ないというぐらい堪能したのだが、坂田の加わった第2部はさらに輪をかけて凄かった。
まず、坂田とブロッツマンが並んで演奏している図が珍しくて嬉しくて、その上、2曲目の出だしで坂田がクラリネットに持ち替えると、ブロッツマンが取り出したのは何とアルト・サックス。目を閉じて聴いたら演奏者を間違えるかもと一瞬思ったが、出てくる音は紛うかたなきそれぞれのもので、個性は聞き違えようがない。途中で坂田がアルト・サックスに戻り、なんと日独巨匠のアルト合戦が実現。ブロッツマンのアルト演奏を聴くのは初めてだと思うが、低い音域を重く吹き鳴らすので、まったくアルトらしくないのが面白い。第1部よりも音量を上げて徹底抗戦する八木。細い体をしならせて一心不乱に爆音をまき散らすニルセン=ラヴ。いやもう、気がついたらずっと噛みしめていた奥歯が痛かったというぐらい、集団即興を聴く緊張感と楽しみに満ちた、期待を遙かに上回るステージでした。
ひとつ疑問に思ったのは各曲のエンディングで、何の合図も目配せもないのに、一丸となってドンッと終わることができるのは、どうやっているのだろう? レギュラー・グループではないだけに、息がぴったり合っているのが不思議だった。
ニルセン=ラヴは2005年4月の来日の時も、八木とのセッションとアトミックでの演奏を見たが、ジャズのコスプレみたいなアトミックよりも、こういうセッティングのほうが遙かに面白い。ラパポートさんによると、10月ごろザ・シングとして来日するかもとのこと。今から楽しみである。
このトリオが結成された昨年夏のノルウェーでの演奏がYouTubeにありました。
http://www.youtube.com/watch?v=rbxUGandqkc
投稿者 chisesoeno : 2007年03月31日 04:56
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://chisesoeno.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/16