≪ 最近の仕事 映画秘宝 | メイン | 23年ぶりにペーター・ブロッツマンを見る ≫
2007年03月20日
3月2日に出たDVDです。なかなか面白かったのでおすすめしておきます。
「ピースキーパー・ウォー 最終大戦」
原題を "Peacekeeper War" といって、3時間を超えるテレビムービーの大作です。2004年の作品で、じつはテレビシリーズ「ファースケープ 宇宙からの帰還」のスピンオフ完結篇なのです。
「ファースケープ 宇宙からの帰還」というのは、1999年に始まったSFテレビシリーズで、2003年までに4シーズン全88話が作られました。日本では紹介のされかたがちぐはぐだったので、結局、最初の2シーズン分しか放送もソフト化もされず、人気もいまひとつ盛り上がらなかったように思います。
6年前に私がSFマガジンに書いた短評はこれ。
ファースケープ 宇宙からの帰還
Farscape
99年英・米■企画・脚本ロックニ・S・オバノン■製作総指揮ブライアン・ヘンソン、他■出演ベン・ブロウダー、クローディア・ブラック■テレビシリーズ■徳間ジャパンより11/23発売開始(全11巻)
NASAの技術者が試験飛行中にワームホールに呑み込まれ、未知の宇宙へ。圧政者のもとを逃れた囚人船に乗り組み、さまざまな異星人と共闘しながら、故郷への道を探る。エキゾチックなスペースオペラの人気シリーズから第1シーズン22話をビデオ化。飄々とした味わいは英共同制作ゆえか。
英米合作と書いていますがこれは間違い。正しくはアメリカ・オーストラリア合作です。謝して訂正しておきます。「エイリアン・ネイション」「シークエスト」のプロデューサー、ロックニ・S・オバノンが企画した第三のシリーズで、製作はジム・ヘンソン・プロ。撮影はオーストラリアで行われました。
私は最初の数話を見たきりだったのですが、今回、完結篇を見て、こんなに面白いなら、もっとちゃんと見ておけばよかったと反省しました。
打ち切りが決まったあと、物語をちゃんと終わらせるべく、プロデューサーが執念で完成させた完結篇――という成立事情は『セレニティー』(についてはこちら)に似ています。硬派な宇宙SFとはちょっと違う、今どきのスペースオペラをめざした姿勢も共通しています。
宇宙SFのテレビシリーズというと、どうしても「スター・トレック」の歴代シリーズや「バビロン5」、今なら「バトルスター ギャラクティカ」のような、それ相応の科学性と、現代社会とリンクするテーマを持った、硬派な作品に目が行きがちです。実際、これらのシリーズが各時代を代表する名作なのは間違いのないところなんですが、主流があれば傍流もあるわけで、「ピースキーパー・ウォー 最終大戦」は、傍流の魅力と楽しさをいいかたちで実現した作品なのです。
この完結篇では、主人公のアメリカ人宇宙飛行士ジョンは、出会った当初は喧嘩してばかりだった女戦士エアリンと、どこでどうなったのか相思相愛の仲になっていて、エアリンはすでに妊娠しています。しかし、結婚式を挙げようとするたびに宇宙規模の横槍が入り、2人は否応なく、宇宙を二分する二大勢力の最終決戦に巻き込まれて、恒久平和のためにジョンはついにピースキーパーとしての役割を果たすことになります。
魅力的なキャラクター、エキゾチックな設定、やたらとスケールの大きな物語という、スペースオペラの三種の神器を揃えた上に、口八丁手八丁のヒーロー、気っぷのいいヒロイン、活きのいい会話とくれば、面白くならないわけがありません。結婚式の繰り返しギャグは『スター・トレック ネメシス』にもありましたが、ここではそれがメインプロットなので、世にも珍しい「結婚SF」と呼びたくなります。
クライマックスではあっと驚く有名SF映画の引用もあって、椅子から落ちそうになりましたが、これは見てのお楽しみということで。
投稿者 chisesoeno : 2007年03月20日 19:24
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://chisesoeno.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/15