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2009年08月30日

 ■ 呪われたフィルムがうちにあるわけ

 そもそもの発端は2004年のこと。WOWOWの名物プロデューサーである渡邉数馬氏から連絡があり、ある作家の選んだ映画特集というのを企画しているという。ところが、怪談やホラー映画に非常に造詣の深いその作家の希望リストには、『本所七不思議』(1937)といった幻の映画がずらり。頭を抱えた渡邊氏は、1本だけ混ざっていた洋画を何とか発掘できないかと問い合わせてきたわけだが、それが「シエラデコブレの幽霊」だった。

「それは有名な幻の映画で、正体は不明、プリントが現存しているという話も聞いたことがない」と回答し、企画の話はすぐに立ち消えになったのだが、個人的に気になったので調査を続けることに。わがホラー映画指南役である殿井君人さん比呂さんにも相談し、資料を漁るうちに、少しずつ内容や製作の経緯、伝説化した事情が判ってきた。こうなるといよいよ見たくなるわけで、海外のビデオ収集家などにも照会メールを出したが、そのときは空振りに終わった。

 ところが、それから幾星霜、すっかり忘れたころになってメールが返ってきた。それらしき作品のフィルムを、知人がeBayに出品しているというのだ。売り手は米北東部の人間で、他にも古いフィルムやカメラ、撮影機材を多数出品しており、そういった関係の業者なのだろうと思わせる。米国内限定で競売に付されたそのフィルムは、指定の価格に達せず、結局eBayでは落札されなかった。

 そこですかさず交渉に入ったわけだが、さすがに考えましたね。VHSでもDVD-Rでもなく、16mmプリント! フィルム・コレクターという人士がいるのは知っていても、それは杉本五郎とか芦屋小雁といった雲の上の人々の話で、自分がフィルムを買うことなど想像したこともない。しかし、こればかりは仕方がない、この機会を逃したら幻の映画が幻のままになってしまう(かもしれない)。このときばかりは苦手の英語メールにも力が入り、もう一人いるという買い手(オーストラリアの人だったらしい)との熾烈な争いを経て、翌週にはもうフィルム缶の入った段ボール箱と対面していたのだった。(この項さらに続く)
 
 

投稿者 chisesoeno : 2009年08月30日 02:12

コメント

フィルムを入手された経緯は、「骨董商からオークションで落札した」としか聞いていなかったので、この辺りのことはとっても興味深いですね。

当初は添野さんご自身も正体不明だと思っていたとは、少し驚きです。

大勢の方に興味を持って頂ければ…ということで、
私も私でブログを使ってDVD化に向けて出来ることをやってみます。

投稿者 ネルソン : 2009年08月30日 10:17